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明治の時計塔

6. 内国勧業博覧会

第一回内国勧業博覧会 明治10年

芳春

第一回内国勧業博覧会 錦絵

芳春画
《 個人蔵 》

明治10年(1877)8月21日にはじめての全国的な博覧会である「第一回内国勧業博覧会」が開催された。 西南戦争もそろそろ終りに近づいた頃である。 会期は102日間、出品点数84,352点、出品人員16,173人、観覧人約45万4千人であった。

会場の東京上野公園には、美術館・本館・農業館・機械館などの建物が建てられ、表門には大時計をかかげ、 公園の入り口には高さ十メートルほどのアメリカ式風車を備えつけて水をくみ上げた。 館内には各所にガス燈がともり、夜も真昼のようだと見物人を驚かせた。

表門上に備え付けられ大時計は、櫓型の塔時計である。 出品者は東京日本橋の金田市兵衛で、この大時計は龍紋賞を受賞している。 金田市兵衛は、日本橋区本町の金田時計店の三代目。明治初年代の東京時計業界において、宮内省の御用達の老舗として、 八官町の小林時計店(小林伝次郎)とならぶ、著名な時計商のひとりである。

第一回内国勧業博覧会に出品された時計は、めぼしいものはこれ位であった。

参考文献 「日本の歴史 第16集 文明開化」
国文社 昭和35年

第二回内国勧業博覧会 明治14年

楊洲周延

第二回内国勧業博覧会 錦絵

作者:楊洲周延筆 明治十四年二月 御届
画工:東京湯島天神町三丁目十一番地 橋本 直義
出版人:仝上上野東黒門町十四番地 浅野 榮蔵
(画工、出版人とも上野広小路界隈)
《 個人蔵 》

第二回内国勧業博覧会は明治14年(1881)3月より開催。 沖電気の創業者である沖牙太郎が、エジソン式炭素送話機を出品したことで知られる。 開催地は第一回と同じで東京上野公園であったが規模は第一回より大きかった。

時計の出品は、国内時計産業の先駆けとなる東京麻布、金子元助(金元社ー八角掛時計)、 金田市兵衛(塔時計)、 小島房次郎(置時計)、水野伊和造(八角時計)などと増え、それぞれ進歩二等賞牌を受賞した。

中絵 金田市兵衛の出品受賞作の塔時計

手前の左に描かれている人物は、明治天皇であろうか?

(梅寿)国利

第二回内国勧業博覧会 錦絵

作者 (梅寿)国利 明治十四年三月十一日 御届
画工兼出版人 清水嘉兵衛 神田区鍋町 二丁目
(画工、出版人とも上野広小路界隈)
大きさ:24x37cm
《 個人蔵 》

会場全体と、取り分け金田市兵衛の塔時計が正確に描かれている。 時計塔の総高は三、四十尺に及んだとされ、下は通行できるようにアーチ型の門に作られていた。

金元社の広告

進歩二等賞碑下賜「水車場製造掛時計品々」
明治14年9月22日読売新聞

金元社は動力に水車を使っていたので水車場製造掛時計と呼ばれていた。

第二回内国博の時計塔鶏卵紙写真

第二回内国博の時計塔

第二回内国博の時計塔の鶏卵紙写真です。 この時計塔は錦絵の世界でしか確認できておりませんでしたが、遂に写真がでてきました。 錦絵では時計塔がかなりデフォルメされてますので、写真はやはりリアルです。 本当の存在感が分かります。

内国勧業博覧会とは

明治4(1871)年、岩倉使節団に参加して欧米を視察した大久保利通は、 日本と欧米との産業の較差を目の当たりにして帰国。 外国との戦争よりも国内をしっかり固めるべきと主張し、殖産興行(しょくさんこうぎょう)策にのりだす。 その柱の一つが、「内国勧業博覧会」である。

各地の産物を町村から報告させ、その土地に適した産物をつくらせたり、海外の博覧会に出品したり、 国内で共進会・博覧会をたびたび開くなど準備のもとに、第一回内国勧業博覧会にこぎつけた。

内国勧業博覧会は五回開催されたが、会を重ねるごとににぎやかになった。 第一回博覧会の後に、陳列の売れ残り品を処分するために、 東京丸の内に竜ノ口勧工場(たつのくち かんこうば)を開いた。 これに刺激されて各地に民間の勧工場が開かれ、勧工場の流行時代がきた。 勧工場はデパートの先駆である。

名誉有功賞拝領(引札サンプル)

各大博覧会に於て名誉有功賞拝領

初期の博覧会は、多くの人を発明に熱中させた。 優秀な出品物には出品主に対して褒賞が授与された。 この引札は、博覧会で有功賞を貰ったことが宣伝効果ありと目論んで、 引札屋が作成したサンプル(広告主が決まっていないもの)と思われる。 左に大黒さんが載った置時計がある。

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