1. 時の記念日の由来
時の記念日の由来
大正九年五月十五日から、六月末日までは、文部省の主催による、「時展覧会」が開催されたのである。
丁度、この会期の中頃の六月十日は、今から凡そ1,300年前、天智天皇が漏刻を用いて、時を知らせた故事に当たっていた。
当時、この「時展覧会」の当事者は、その故事に做って、六月十日を漏刻祭或は、
時の記念日とすること等について積極的な話し合いを行っていた。
なかでも、この「時展覧会」を熱心に援助していた「生活改善同盟会」は、特に「時の記念日」を推進する団体として知られ、結局、
この「生活改善同盟会」の提唱により、今日の「時の記念日」が誕生したのである。
生活改善同盟会
生活改善同盟会は、伊藤博邦公爵を会長として、有力なメンバーを擁し、大正九年一月に誕生した。
その活動は、社会や家庭に於ける生活を通じて、衣、食、住の改善をはじめ、社交、礼儀など、十数項目にわたり、
その改善を推進するものであった。
たまたま、文部省が「時展覧会」を契機に、時間尊重の考え方を発表すると同時に、同会は、いち早くこの思想に共鳴し、
実行要目の第一項に、「時間を正確に守ること」と謳ったのである。
その後、同会は、時間尊重の宣伝事業として、六月九日、十日の両日、時の記念日の行事として、銀座、日本橋、上野、
浅草等の盛場でビラ約五万枚を配布し、「時の記念日」の意義をPRしたのである。
生活改善同盟会が配布した当時の「ビラの内容」
時の記念日
この六月十日は、1,250年前、畏くも、天智天皇が、漏尅水時計を用いて報時の事を行わせられました日に当たります。 我等は斯様な由緒ある日を記念に一層、時間を尊重し、定時を励行致したいと思います。
○執務の時間
- 出勤、及び退出の時間を励行する事。
- 勤務と休養の時を区別し、時間を空費せぬ事。
- 取引約束の期日を違えぬ事。
○集会の時間
- 集会の時日は、多数者の都合を考えて定める事。
- 開会の時刻は掛値をせぬ事。
- 集会の時刻に遅れぬ事。
○訪問の時間
- 先方の迷惑する時間の訪問は慎む事。
- 訪問は予め時間を打合せる事。
- 簡単な用談は玄関店頭で済ます事。
- 面会は用談を先きにして早く切り上げる事。
- 来客は待たせぬ事。
○正確な時計
時間の励行には、正確な時計が第一に必要であります。 正確な時間に合わせるには午砲の外に最寄りの電信局及び停車場に行くがよろしい。 午砲は約三町毎に一秒遅れて聞えますから、それだけ差し引く必要があります。
生活改善同盟会
財団法人生活改善同盟会 発行「生活」
第三巻 六月号 「時」の記念号表紙 |
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昭和2年発行、時の記念日の改善同盟の機関紙「生活」。 月刊誌で6月号の為、「時の記年号」になっている。 本紙46ページ、口絵は元昌福宮報漏閣の水時計。
参考図書:
- 近江神宮時計博物館カタログ
- 最新変動教材収録第九巻第十号
臨時号誌上時展覧会(南光社発行)
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