9. 鍵S印仕様の変遷
ヘソ目は明治32・33年頃から戦後(昭和20年代)まで、約50年間もの長きに渡って製造された、超ロングセラー製品です。 最初から最後まで、そのスタイルはほとんど変らず、ちょっと見ただけでは時代の見分けがつきませんが、 時代ごとの特徴を、以下に整理します。
設計資料等は持っていないので(おそらく存在しない)、 現物確認からの情報整理となっていること、また扇印の製品は資料不足のため整理対象外としていることをご了承ください。
各部品の考察
明治後期の製品
以下時計は、明治後期のもので、最初期の製品ではないものの、大正時代以降の製品には無い特徴がある面白い資料です。
資料 1 明治35年頃(推定)
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資料 2 明治30年代末(推定)
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目安真の板バネは地板裏にある |
受けネジの頭は丸で溝は無い |
修理履歴は明治41年と大正?14年 |
目安のつまみは剣回しと同じ差込タイプ |
資料1との違いは、文字板は金属板は省略されてなし、機械は天輪が小さくなり腕金が二本になり、またゴトクは時方用の長いストッパーが廃止されています。 明治期のゴトクは大正以降と比較して細くて割れやすいです。
資料 3 明治40年代??(推定)
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地板の形状はそのままで目安真のばねが螺旋型になり、地板左上には鍵S印の商標が入っています。 地板に商標刻印が入った最初の製品な気がします。 (機械の商標刻印については、同じ時期の製品で入っていたりいなかったりと安定していないようです) 機械の地板側に時方ゼンマイのストッパーを付けたため ゴトクについている長いストッパーは先端をパキッと折って取り付けている感じです。 同仕様でゴトク側のストッパーを完全廃止しているものも存在しますので、ゴトクはたくさんあった在庫品を新旧混ぜて適当に使用していた気がします。 なお、文字板は補修用文字板(木村健吉製)に変わっています。オリジナルはTRADE MARKの文字のない鍵Sだけのマークが入っているはずです。
資料 4 明治40年代
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機械も外装も一切部品交換歴のない完全オリジナルと思われる大変貴重な資料です。 修理歴は文字板裏と裏蓋内部の二か所に明治43年と明治44年と確認できます。 おそらく大正時代以降は使われずに今までずっと眠っていたものと思われます。 仕様は資料3とほぼ同じですが、この時計には機械に鍵Sの刻印がありません。
資料 5 大正初期(推定)
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これ以降は地板の形状が変わっています
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