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変形型・特殊機構 掛時計

12. ニュークロック数字時計 【ニュークロック製作所】

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メーカー 製造年代 大きさ 仕様・備考
ニュークロック製作所(東京市下谷区御徒町二丁目四十番地) 大正末期〜昭和初期(推定) 【No.99】丸文字板、61.5×46cm
【No.101】横長角文字板、48.5×43cm
八日捲き、デジタル時間表示

時刻をデジタルで表示する変り種の掛時計。 赤い文字が「時間」で、黒い文字が「分」です。 12時は0と表示されますので、タイプ1の写真は12時20分です。

ケースは写真の3種類が確認できています。 変わり形ケースで人の顔のようにも見えてユーモラスです。 こういうケースの地色はケヤキと良く思われていますが、量産時計では重く、堅く、加工しにくい欅はほとんど使いません。 塗装すると大変欅に似ている栓の木(セン)が使われています。

箱裏にはシールが貼ってあり次のようにあります。

文字板

文字板下に"MANUFACTURED BY THE NEW CLOCK CO TOKIO" とあります。 "TOKIO" という書き方は古そうに感じますが、全体の印象からこの時計の製造年代は大正末期〜昭和初期頃と思われます。

回転盤と機械

機械は皆同じようです。 構造は、なかなか複雑でオリジナル設計のようです。(現在、パテントを調査中)
向かって左のゼンマイが時方で右が円盤の文字板を回すゼンマイです。 下に伸びた2本のロッドに繋がったネジで文字盤を調整します。(左が時、右が分)

動画で動きをみる

動画提供 : チーちゃんのご主人

取り扱い説明書

時間を調整する三つの調整機の使用法

カタログ 昭和4年版

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ニュークロック数字時計及電気時計各種型録

1929年(昭和4年)版









待望のニュークロックのカタログが発見されました。 ニュークロックのカタログ正式名称は「ニュークロック数字時計」と言い、電気(電池)時計も各種製作されていました。 タイトルは「NEW CLOCK 1929 TOKIO NEW CLOCK COMPANY」1929年(昭和4年)のカタログで、 特許数字時計及電気時計製造発売元 合資会社ニュークロック製作所(東京市下谷区御徒町二丁目四十番地)となっています。

カタログにはNo.99のオパル型からNo.106 ファスト型まで8種のニュークロックが並んでいて、 見慣れない置きスリ型も有りますが機械はすべて同一のようです。 文字板は角型が支面高ハ寸、丸形が支面径一尺二寸でそれぞれに面取り厚硝子が入っています。

カタログ最後のファスト型の下に「電気時計ハ以上各種型予約注文ニ応ズ」と書いて有りますので同型の電気時計も有ったという事でしょう。 東京日本橋二丁目富士商会が総代理店の「三共式電気時計(国産)」のカタログ中にNo.101ダイヤ型と同一型「単独式スリゲ―ル型」電気時計が載っていますので、 この会社とどこかで繋がっている可能性を感じさせます。

同一型単独式スリゲ―ル型 三共式電気時計

三共式電気時計(国産)カタログより

ともあれ「本時計は全く微妙なる独創的発明なれば実に時計界の一大革命にして未だ世界にも其類例を見ざるのみならず 瞬間表示の機敏なる動作は何人にも一種の暗示を与え発奮躍動して貴重なる時の概念を痛切に感じせしめ・・・」 とすごい難しい口上を羅列していますが、現代の軽いキャッチコピーとは雲泥の差で権威主義的ですね? 余りに革新的過ぎて時代が追いつけなかったのか?複雑な機構ゆえに調子が悪かったのか今一普及を見なかったようです。

機械の考察

機械の動きをみる

動画と考察記事提供 : わったんさん

確認内容

通常の8日巻の時計より強いゼンマイが使われています。 向かって右を時計回り、左を反時計回りに回すので普通の時計とは逆回転になります。 ゼンマイ外端のループエンドの所にニュークロックのトレードマークであるSFCの刻印がありましたので、オリジナルのもので間違いないと思います。

どの部品も(バネは分かりませんが)ほぼ全てニュークロック製作所で作られたと思われます。 地板はもちろんですが、歯車の歯をよく見ると、普通の時計の歯車よりも先が丸いのです。 明治時代のものにはよく尖った歯型のものがあり、昭和の頃になると段々と緩やかなカーブになるのですが、それに比べてもっと丸いです。

ガンギ車までの輪列が左側にあり、右側のゼンマイがデジタル表示機構の全てを動かします。 右側のゼンマイは8個の歯車を回しています。この点が強いゼンマイが入っている理由です。 左側の輪列は普通の時計と一緒でガンギ車が5番目に来ますが、ゼンマイは右側と同様に30日巻ぐらいの強いゼンマイを使ってあります。

耐久、メンテナンス性は良くないと思いました。 耐久性に関しては動画を見て頂ければ分かるかと思いますが1分に1度真鍮の板同士がバチンとぶつかります。 この個体はそれによる摩耗などはあまりありませんでしたが、5年も動かせばすぐ故障しそうなほどです。 メンテナンス性についてですが、地板を支える支柱が7本あり、分解したあとに組むのが少し大変でした。 地板の大きさは一般的なアンソニア機械の約2倍あり、曲がっている箇所もあります。 構造も簡単ではありませんから、修理師の方の中には手を煩わせる方もいらしたかもしれません。

特許の画像と実機を比較してみると部品が少し追加されているのが分かります。

実用新案

置時計版

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電気時計版

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当時の映画の中にニュークロックを発見

NEWCLOCKS No.101ダイヤ型 登場シーン

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