10. バネ振子掛時計 【S.MIZU】
メーカー | 製造年代 | 大きさ | 仕様・備考 |
---|---|---|---|
S.MIZU (名古屋) メーカーは不明 |
昭和初期(推定) | 全長53cm | 八日捲き |
逆L字形の猫背になったこの時計は文字板の右側に有る振子室の中に上からコイルスプリングを吊るしてその先に小型分銅形の
振子(重り)が付いています。
左側の機械のアンクルにヤジロベイ形のワイヤーが接続してあり左側の尖端にはバランスを取る重りが付き、
右側の先端は振子室のコイルスプリングに繋がっています。
振子の重りがバネ上下運動をすることによりアンクルに連動したヤジロベイ形のバランスワイヤーがタイミングをとって動いていきます。
打ち方機構は2本の棒鐘打ちで、2本同時に打ちます。
箱はラワンのような質感で木目調の彩色がされています。これは変形枠・からくりコーナーにある同S.MIZUの額縁鏡時計の側(側面)
と全く同じような材質、塗装です。
文字板はアルミ金属文字板、文字板硝子は甲高硝子。
文字板にS.Mizu(S.MIZU)とマーク有り。剣(針)の止め方はスクリューナットです。メーカー不明
仕組みをもうちょっと詳しく解説します
機構について質問がありましたので補足します。
箱の外にノブがあってこれの下にコイルスプリングが吊るして有ります。
このノブを回すことによってコイルを巻き込んでコイルの長さを上下させて緩急の調節をします。
コイルの中に通ってる重りのついた心棒はコイルが真っ直ぐ上下するように(歪まないように)入れて有ります。
左から伸びたアームのワイヤーが先端にループを作ってコイルに繋ってます。
緩急を調節するとコイルが回転してアームワイヤーとコイルとの接合の位置も変りますので、簡単にスライドして接合の位置も
変るようになっています。
簡単な機構だけに調子をとるのが面倒な時計です。
箱の外にノブがあってこれの下にコイルスプリングが吊るしてある |
アームのワイヤーは先端にループを作ってコイルに繋がる |
S.MIZUの時計について
昭和初期頃の名古屋製と思われる時計にS.MIZUと文字板にマークの入った時計を見かけます。 特に変形の変わり型ケースの時計も多く、大変個性の強い時計ですが残念ながら現在この、S.MIZUのメーカを特定するに至っていません。 昭和7年の東京、吉田時計店「東洋、舶来、明治掛置時計No.112」カタログにS.MIZUの文字板の付いた、バネ時計と外観と塗装が 良く似たコーセイ形チンチャン打ち時計やスリゲル型の掛時計が載っています。 他の明治時計はタイトルに明治の社名が入っていますがこのS.MIZUに付いては、何処にもメーカー名が無く、 他年度の同様のカタログにはこれらは「名古屋製掛時計」というタイトルが付いてますので間違いなくメーカー不明の名古屋製で、 卸商向けのOEMゾロゾロ品では無いかと思います。
やや古いものでは名古屋時計製造合資会社のトゲ丸Y商標刻印のある機械が入ったものを確認しています。 そこでMizuっぽいのは、職長の水谷駒次郎です。 名古屋時計製造は明治37年に解散し、水谷駒次郎が機械及び設備一切を譲り受けて、 明治37年、前ノ川町に水谷時計製作所を創立しています。 もともとは水谷関係、その後ブランド名をどこかが引き継いだのではないかと想像しています。
東京、吉田時計店「東洋、舶来、明治掛置時計No.112」カタログより |
コーセイ形チンチャン打
文字板のガラスは外側に膨らんでいる |
高さ46cm |
側面にはオシャレな三角窓板の境目の2本のネジを外すと機械の点検が可能。 |
振子式機械地板には三工舎の刻印 |
写真提供 ペガサスさん
上のカタログの一番左の時計です。 文字板は補修用のものに貼り替えられています。 色がちょっと明るすぎるような気がします。 もしかしたら元はカタログ写真やバネ振子の時計と同じような濃い色の塗装だったのかもしれません。 機械には三工舎の刻印があります。
この時計の機構等について、以下の特許・意匠登録があるようです。
- 新案特許・意匠願 第10667号、第3162号
- 登録済 第13604号 打方調和器、第15694号 合打機械
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