5. 鳥籠時計 【東洋時計】
リプロの多さが人気のしるしということで、大変人気のある鳥籠時計です。
多くは、東洋時計製の「MADE IN OCCUPIED JAPAN」即ち占領下の日本製の刻印があり戦後のものです。
これは、近年になってお里帰りしているのかも知れません。
東洋時計では、
昭和20年8月の終戦と共に兵器生産がなくなると民需生産への切り替えが急務となり、兵器生産用の残った材料を活用して
なべや釜などを生産するとともに、本業の置き時計のも戦前に存在したモデルをベースに生産を再スタートしました。
そのなかに戦前(昭和8年頃)から作っていた鳥籠とゴールドフィッシュがあり、これが好評で特に進駐軍から
取引が拡大してアメリカ向けに大量に出荷したそうです。
500人の従業員で月に5,000個を生産し、シンガポールやインドにも輸出していたようですが、
昭和26年には新東洋に経営譲渡をして東洋時計18年の歴史に幕を下ろしています。
鳥籠時計は、鳥籠のなかにセルロイド製のカナリヤ(らしいです)がいて左右にチクタクと首を振ります。 止まり木の台が文字板になっていて、時刻をさす針は一本。 機械はエンゼルフィッシュなどと同じ日巻ビー機械。機械は戦前も戦後も同じようなものです。 戦前と戦後では、専用スタンドの格好や材質も違うようです。 鳥籠は戦前の東洋のだけで5種類程あり、 又、戦後名古屋のメイコーが小型鳥籠時計、尾張時計が角型のオルゴール入鳥籠時計を作っています。 戦前物のほうが細かい飾りなど仕上がりがよく完成度は高いようで、以下で紹介する東洋のNo.70は特に傑作です。
資料1:No.70 鳥籠 丸銑(戦前)
メーカー | 製造年代 | 大きさ | 仕様・備考 |
---|---|---|---|
東洋時計 (営業所:東京府下谷區、第二工場:埼玉縣上尾町) |
昭和8年〜 | 高さ全体九寸、鳥籠四寸五分 | 毎日巻き、11.60円 |
この時計は、当時の資料には以下のような記述があり、鳥籠を掛ける台(ハンガースタンド)を販売していたことがわかります。
「鳥籠掛台 黒更砂石 クローム金具 3円 鳥かご掛け台だけの御注文にも応じます。(台は別売)」
このタイプの鳥籠には環の根元に丸い玉飾りが付く「No.69 クローム銑付 鳥籠」もありますが、値段は一緒です。
資料2:No.92 薬玉飾 鳥籠(戦前)
メーカー | 製造年代 | 大きさ | 仕様・備考 |
---|---|---|---|
東洋時計 (営業所:東京府下谷區、第二工場:埼玉縣上尾町) |
昭和8年〜 | 高さ全体九寸、鳥籠四寸五分 | 毎日巻き、12.00円 |
写真の時計は、底に付く3個の薬玉飾の足が欠落しています。
戦前の鳥籠は、上で紹介したものが初期のものです。 少し後になって以下のタイプも発売されています。
- クローム 鳥籠 No.68 10.00円
(鳥籠の屋根がとんがっているタイプ) - 角型鳥籠、美麗サック付 No.100(クローム、空色、ピンク)13.00円
(横長の三寸五分角の鳥籠でスタンドの付かない置きタイプ)
ハンガースタンドについて
上で紹介した二点の写真のハンガースタンドは戦後のものでオリジナルスタンドではありません。
オリジナルの台はNo.70については、昭和9年の報知新聞広告の絵にあるタイプです。
戦前タイプの鳥籠の台は、丸と八角のオリジナルスタンドがありましたが別売りで高価でした。
- 丸台 黒更砂石 クローム金具 3.00円(新聞広告のP字型のスタンド)
- No.93 八角台 金色 4.00円
- No.94 八角台 銀イブシ(クローム)4.00円
八角台とはハンガースタンドの台の形が右の画像のように八角の黒更砂石ということで、金、銀はスタンドの金具の部分の色 を表しています。
戦前の鳥籠のカタログ
68にあるように、籠の頭の尖った鳥籠も東洋時計製で、戦前から作られていたようです。
資料3:クローム鳥籠(戦後)
戦前物に多い彫刻飾りがなく台座がクロームメッキのプレーンなシンプルなデザインで、戦前のNo.68に少し似ています。
見分け方としては、鳥かごの頂上の格子が戦前は山形にとがっているのに対して、
戦後のクローム鳥かごはNo.69、70のように平らです。
又、足は戦前は球状ねじ込みですが、戦後はそろばん玉のようなねじ込み足が付いてるところが違っています。
ハンガースタンドは戦後物はこのコイルスプリングが入ったような石の台座で戦前物より背が低く、
スタンド高さは21.5cmです。
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