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スイスの時計産業

スイス時計とEEC市場

EEC諸国の関税率は、EEC共通税率によって、非常に高いフランスの税率と非常に低いドイツの税率の中間に定められる。 イタリアの税率はドイツより幾分高くもベネルックス三国は共通税率より幾分低い。 西独の税率は従価4%乃至2%であり、フランスは25%から30%の間である。 EEC共通関税は、アンクル時計について13%を規定していたが、このたびジロン・ラウンド(ガットの第5回関税引下交渉)において、8.5%強に引き下げられた。 フランス及び西独の強力な競争相手の抬頭に合って、従来の最良の顧客であったドイツとイタリア向けのスイス時計輸出は今や脅かされている。 それに対しフランス市場には好ましい期待が持てる。

EECからのスイス時計排斥という差別待遇の危険は、ジロン・ラウンドにおける譲歩によって消滅したとは決していえない。 これについて連合体機関紙 "Suisse Hologere" は厳しく警告している。 既に1958年依頼スイス時計業界は、ドイツ及びフランスの時計産業に対し連合体の水準において諒解取り付けに努力して来た。 各種談合も重ねられており、これには最初イギリスも加わっていた。 当初事態は有利に展開するものと思われていたが、その後行き詰った様子である。 西独については、合意の時機がまだ熟していないように見える。現在西独時計産業の輸出は後退している。

スイスの主要目標は、 1) 優秀な外国製造会社との統制のとれた部品の交換と 2) 国際的水準におけるシャブローンの輸出の阻止である。 西独税関は最近ではもはや部品輸出に対し監督を行っていないが、その原因は西独のカステル政策にあるらしい。

これに対しフランス時計産業との関係は明らかに改善された。 6月27日フランスとスイスの政府間において時計条約が調印され、これに対し両国の時計産業は同意した。

1962年度スイスはフランス製時計部品の輸入割合を3分の1、4百万フランまで引き上げる。 またスイスは時計製作用機械及び工具の輸出を自由にする。 これに対しフランスはスイス時計の全品目に対する輸入を自由化し、これら品目に対する関税引下げの必要性を認め、これは直ちに実行される。 またフランス時計産業は、シャブローンの輸出及び企業の外国移転に対する闘いを強化する義務を負う。

ノイエ・チェルヒヤー・ツアトイウングの記事によると、スイス時計業界筋では、フランス市場の見込みは、普通の時計よりも高級時計のほうが有望であるとしても、 なかなか悪くはないものと観測している。 フランス市場に感心を抱いているアメリカ時計会社は、フランスのジューラ山脈地方で「キントン時計」を生産している US Time社一社しかない。 イギリスは---新聞記事の説によれば---自分のことで精一杯である。 西独はフランス時計と同じ品質及び価格のものを出荷しており、フランス人はフランス製に慣れてしまっているので、西独のチャンスは限られているように思える。 フランス政府は貴金属時計の輸入に明らかに好意的であり、スイスの時計輸出業者は既にフランス国内における販売網を握っている。 しかしながら市場征服は、特にフランス人の趣味を考慮しなければならないので、簡単には行かないだろう。

他のEEC諸国について一つだけ述べると、スイスはその原産地表示に関し個々の市場の状勢を正確に追跡しており、ベルギーではそのための訴訟を起している。 EEC地域においても他の地域においても脅かされているのは廉価品、無銘時計である。

日本とフランスと西独がインドに時計工場を建てるのをスイスは注意深く、また幾分の懸念をもって注目している。 インドはスイス製時計にとって従来から可成重要な市場であった。 ここでも脅かされているのは廉価品の時計である。

しかしスイスは悲観してはいない。EECとの連合にはなお長い時間がかかることは明らかなので、業界は西独市場の強力な市場調査を開始している。 西独の時計商業、時計工業に関する便覧は消費段階まで詳細に研究している。 西独の時計工業、賃金、生産、卸商、小売、価格構造について精通しようと望んでいるのである。 1960年4月1日に結ばれた「ドイツ向けムーブメント及び時計商の輸出に関する(国内)協定」第2条に基づき、1965年に至るまでの販売見込みの調査が行われている。 このためドイツ委員会は実施細則を作り、Etablisseur と Manufaktur の名簿を公表した。 更に完成したムーブメントを供給してもよい西独の商社及び製造会社(更に特定の宝石、模造宝石、きりばめ細工を用いた側の製造業者及び承認された卸商)のリストも作成された。

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EFTA地域においてスイスは西独及びフランスの競争会社よりは関税の点で優遇されている。 しかしこのことは西独及びイタリア市場の代替物としては不充分である。 2年間イギリスがロシヤ製時計を総額30,000ポンド・スターリングだけ輸入許可したのは、エピソードに終わったようだ。

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