研究
時計会議所は、Laboratoire Suisse de recherches(スイス研究所)の管理委員会、Soc. Suisse de Chronometrie(スイス時刻測定協会)、時計辞典、 Information Horlogere Suisse(スイス時計公報所)に関係しており、主要連合体は原子炉会社、原子炉研究所、Centre electronique horloger(電子時計センター)及び 最近設立された宇宙研究協会に関係している。 この意味するところは、ロケット研究や電子工学の新しい科学・技術の中で数百年続いた古い伝統を踏まえながら時計産業も独自の役割を演じようと望んでいることである。 その役割とは、"Miniaturisieren" 微細化、即ち特別にエレメントの微細化を計ろうとするものと考えれば大体当っているだろう。 研究はただ組織体だけが行っているのではなく、有名な幾つかの大会社もまた行っている。 たとえば現在ジュネーブの有名な会社 Pateck Philippe社は、ストロンチュウム90を使用して自社で開発、なお試作段階にある原子時計を宣伝にカナダに送っている。 その大きさは、微細化のお陰で大型目覚し時計程度のものである。
ノイエンブルクのCentre Electronique Horloger (電子計算センター)に、FH,エボーシュ,UBAH,それに恐らくはロスコップ連盟が共同で設立したもので、 スイス時計研究所の補充施設とでも云うべきものである。 所長にはスイス電子工学研究家、ウェリンガー博士が迎えられた。 ウェリンガー氏は15年間アメリカで、最初はイリノイ大学の教授として、ついでジェネラル・エレクトリック社の研究所長として電子研究に従事した人である。 彼は電子時計の共同研究を行うために時計研究所と技術研究所との融合を目論んでいる。 彼自身の研究は、彼と一人の時計技師と一人の電子専門家と一人の応用物理学専門家とから構成されている。
7年の研究の結果エボーシュは電子時計を完成した。 これは時間的にはアメリカや他の国の電子時計に後れを取ったが、その量産と価額の点で、なお世界市場に進出する機械は多分にある。 5年後には量産体制が熟すると思うが、その時の値段は65〜70弗を越さないだろう。 エボーシュ自身は、この生産に携わらないで製作は個人会社に委ね、ただしこの電子時計が外国でも直ちに専門的なアフター・サービスを受け得るための配慮は引き受けるものらしい。
エボーシュは、その取引先から価格をつり上げすぎると批難されている。 エボーシュの社長シドネー・ド・クーロンは、それに対し研究の必要性を楯にとってその価格政策を弁護している。 「我々は、重要な諸問題に精通するために他の製造部門も経営している」というのである。 エボーシュは、各地の国際見本市やバーゼルの見本市などで、その水晶発振部門やトランジスター部門の製品も展示している。 その高精度水晶を用いれば、高速度測定用の各種器械を製作することができる。 1961年エボーシュはル・ロークルの Ulysse Nardin 社との共同製作による最初の水晶時計を発表した。 半導体部門では、トランジスターを更に微小化することに成功、それを時計工業の特殊用途に供している。(注)
(注) エボーシュ社はロンドンにある英国の大会社 Louis Newmark と電子器械に関しヨーロッパ市場で協力する協定を結んでいる --- 即ち市場分析、技術開発、生産、販売、商業及びサービスに関する協力。 Newmark はスイス時計の最も重要な輸入業者の一人であり、又スイス・クロノメーターの主要輸入商である。
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