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スイスの時計産業

時計業界の強制品質管理制度

「強制品質管理制度---公式には『技術統制』と呼ばれる---は1961年6月23日の連邦議会の議決の根本的な改正点であり、又中核をなすものである」 ---このように業界の有力筋では判断しており、これに対し今までのところ反対派からはなんらの反論も示されていない。

他の国---フランス及び日本---で実施されている管理制度を模範として充分に研究した後、完成品時計製造業者FHは既に1960年4月25日以来自主的な品質管理を始めた。

クロノメーターについては既に1886年以来コンテストの関係からジュネーブとノイエンブルクの観測所及び7ヶ所の公立検定所で自主的な機能検査が行われていた。 このたび、すべての時計に対する品質管理制度を条例の中に取り上げるよう政府に提案したのは時計業界自身であった。 1961年9月1日FHは全加盟会社520社に対し管理を義務ずけることに決定した。 1962年1月1日には、条例によりこの管理制度はスイスの全時計製造業者に対し、従って加工素材及びロスコップ時計製造者に対しても義務ずけられることが決定された。

管理計画は抜取検査管理のシステムに基づき、見本抜取りは統計学的方法によって作成された表をもとに行われる。 1960年5月から61年9月までの間に管理された時計数は、23,000個から320,000個に増加した。 60年9月には提出されたロットの40%以上が差し替えされたが、それ以後差し戻し率は20%に下がった。 現在ではこの抜取り検査システムで4千万個の輸出時計を管理することができる。 その間13の検査所が建てられた--- 即ちノイエンブルクの国立中央管理所とジュネーブ、ル・サンチェ、ロークル、ラ・ショードフォン、サンティミエ、ソロトウルン、トラメラン、フリューリエ、マリアソ、ブルントルート、リースタール に置かれた12の地方管理所である。各管理所は4台から12台の管理装置を備えている。 電子データ処理装置により、手続きが迅速になった。 管理の目標は、ゼンマイの巻きの強さの異なる状態及び異なる位置と温度状態(35℃まで)における一日の精度の測定である。 また管理の使命は、時計製造業者が、ただの要求を充たすだけでなく、更に努力するための手助けをするものでなければならない。 管理者には、時計技術者、熟練時計工及び修理の専門技術者(Rhabilleure)がなる。 管理は一日の精度、その誤差、位置及び温度を変えた場合の誤差を測定する。 4つの管理基準により、品質指数と呼ばれる点数が出される。紳士用時計、婦人用時計、小型婦人用時計には夫々異なる指数が定められている。 資金としては、700,000フランが計上されており、連合体が出資する。(なお付け加えると、時計石の製造者も品質管理を義務制として実施している。)

管理制度は、略式管理、普通管理、精密管理の3段階に分かれている。初めて管理を受ける者は、普通管理を受けなければならない。 実績を示したものは、略式検査で済むようになる。疑わしいものは精密検査にかけられる。ノイエンブルクの中央管理所には、電子分類機が備えてある。 (詳しいことは、FH発行のパンフレット「スイス時計の強制品質管理制度」に述べられている。)

62年1月1日この管理制度が敷かれた後、FHの最初の意見発表によると、業者の約30%が既に略式管理の部類に入り、60%以上が普通管理を受けている。 残りの少数は、今後品質を改善しない限り、63年1月1日を期して実施される精密検査を受けねばならなくなるだろう。 監督委員会は目下63年度の管理基準指標強化を検討中である。 自社の生産高をごまかして申告したり、その他の違反行為のあった者は、その輸出を監督され、名前がブラック・リストに載ることを覚悟しなければならない。

統計的品質管理についてはFH発行の雑誌の中に一文が載っている。 FHの抜取検査は標本から各種数値を計測するのではなく、予め定められた基準への適不適を検査するものである。

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スイス時計産業は品質改善に努力しているが、これと関連して興味のあることは、 FHが今なお「Zentralstelle fur das Schweizerische Ursprungszeichen(スイス原産地表示中央局)」に関係していないことである。 この中央局は特に外国における「弩マーク」の保護を目標としており、現在スイスの地位を固めるためにEECと協議を重ねているところである。 中央局とFHとの交渉は現在進行中であり、今後も継続される。

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