3. PUBLIC 受石入
EMPIRE 銘 文字板
メーカー | 製造開始年 | 大きさ | 主な仕様 |
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精工舎 | 1911(明治44)年 | 16型 |
アンクル式、受石入 チラネジ付丸テンプ、平ヒゲ 850銀専売側 二段瀬戸引き文字板 |
この時計の機械は、大正2年の精工舎目録には、「パブリック」とあります。
文字板、ケースともに上の専売形ケースのエンパイヤとまったく同じで外見では区別がつきません。
機械の受の形がスイス式に分かれているように見えるのが特徴です。
(実際は繋がっていてわかれていません)
パブリックはこの他に、6石、9石があり、この時計は受石入と表示されています。
「PUBLIC」は服部金太郎が大正元年10月10日、
指定商品を時計其ノ付属品及其ノ各部として商標登録
しています。
商標が懐中時計用ではなく時計其ノ付属品及其ノ各部という部類であることから、当初「PUBLIC」は時計そのものを指す名称ではなく
機械の名称だったと考えられます。「PUBLIC」の機械を精工舎の各種あるケースに収める際に標準的に採用されたのが
「EMPIRE」銘の文字板だったようで、この組み合わせの時計は「エンパイヤ銘々(メイ々)機械」と呼ばれていました。
なお、すべてが「EMPIRE」銘の文字板というわけではなく、 パブリック型機械に「PUBLIC」銘文字板を合わせた時計が大正元年頃に一瞬だけ販売されました。 この時計の場合は懐中時計そのものを「パブリック」と呼べるのではないでしょうか。現存数は極めて少ないようです。
大正2年7月精工舎目録より パブリック図版
「ケレー」とは、ニッケルメッキの機械を指すものと考えられます。
「メイ々」とは、「
銘々式
」機械のことで、機械押がそれぞれに分割されているものを大正時代にこう呼びました。
パブリック 十六形ケレーメイ々 二枚車六石アンクル |
パブリック 十六形ケレーメイ々 二枚車九石アンクル |
パブリック 十六形ケレーメイ々 二枚車受石入アンクル |
PUBLIC 銘 文字板
これが、現存数が少なく希少なPUBLIC銘の文字板の付いたモデルです。 製造期間は、「パブリック銘で文字板が付くのは発売翌年からで大正元年9月頃から大正2年の間の約1年(間)のみ存在」と 精工舎懐中時計図鑑 (けいすい汎書) 流郷貞夫(著)では特定されています。
写真提供 いさがわさん
謎のPUBLIC 舶来品?
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文字板と裏蓋内側に「PUBLIC」とあります。 しかし、機械は精工舎のパブリック機械にあらず、また側も専売側ではありません。PUBLIC字体(文字板)も刻印(裏蓋内側)もちょっと格好良過ぎ? 精工舎の「PUBLIC」銘文字板が極端に少ないのは、この時計の商標との関係でしょうか?