4. 機械の点検・清掃・調整・注油
機械の点検
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ゼンマイの確認
ゼンマイは少し巻いただけでは、切れているのがわからないことがあります。 時方と打方の両方を目視確認します。おや、時方のゼンマイの巻き具合に乱れがありますね。 よく見ると、切れたぜんまいを修理して繋いであります。 本来は新品に交換したほうが良いのですが、十分な長さがあるようなので、昔の職人さんが頑張った痕跡を残すためにそのままにすることとします。 切れたゼンマイを繋ぎ合わせる方法は、左横の関連ページリンクで紹介しています。
ヒゲゼンマイの確認
ヒゲゼンマイは幾度もの修理の過程でダメージを受けやすい部分です。 切れたり変形していないかを確認します。 写真ではヒゲゼンマイの変形はあまりありませんが、ヒゲ持ちからかなり長めにヒゲゼンマイの端が飛び出ていますね。 遅れを修正するためにヒゲ玉の位置をずらして、ヒゲゼンマイを短めに固定しているようです。
テンプを外す
ヒゲ持ちクサビをヤットコで抜き取り、時計と反対周りにテンプを回転させて緩急針からヒゲゼンマイを外します。 その後、文字板側の受ネジを緩めてテンプを外します。 テンプを外す理由は、天真の変磨耗の有無を目視確認するためです。
天真の確認
キズミなどのルーペを使って天真(テンプのシャフトの先端)の摩滅・変磨耗の有無を確認します。 今回の場合、古い油が固まって付着しているものの、摩滅はありません。止まりの原因は天真の磨耗では無いようです。 参考に、別の時計の天真の摩滅したものと、研磨後の写真をのせておきます。
止まりの原因の解消=アンクルピンの角度調整
止まりの原因は想定した天真の変磨耗でなかったことから、真の原因を見つけなければなりません。 テンプを外した状態でアンクルを手で動かしアンクル周りの問題の有無を確認しました。 結果、ホゾ穴がやや大きいためアンクルに若干のガタつきがあるのと、アンクルピンの角度にも問題があり、 姿勢によってガンギ歯にアンクルピンが引っかかっていたことがわかりました。ホゾ穴詰めとピンの角度修正の両方をすればよいのですが、 今回はピンの角度調整だけで止まりは解消しましたので、それで良しとします。
機械の清掃・調整・注油
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機械の洗浄
ガラス製の洗浄容器にベンジンを入れて洗刷毛で各部の汚れを落とします。 本来は機械を完全にバラしてから、部品個々を洗いますが、 今回はあまり汚れていないため、手抜きの丸洗いです。 汚れていないように見えても、洗浄容器の底が黒くなるほど汚れが落ちました。 乾燥を待って、注油工程に入ります。
ゼンマイへ注油
大物用ゼンマイ油を注油します。油筆というものがありますが、写真は水彩絵の具筆で代用しています。
ホゾ・ガンギ歯等への注油
大物用ホゾ油を注油します。筆ではなくオイラーが便利です。写真は3本セットの一番安いオイラー。
天真の組み付け
洗浄したテンプを元通りに機械に組み付け、受けネジを適度にしめます。 天真の両端にも注油します。軽く振ると時計は元気に動きだしました。