8. 悩ましい文字板のマーク
時計のメーカーや製造された年代を調べるうえで、文字板のマークは大変重要な手掛かりとなります。 文字板の12時下にあるマークは通常、登録商標のマークであることが多く、 1999年に発行された「日本之時計商標 明治編」が大変参考になります。
明治編とはいえ、日本の時計会社の多くは明治時代に創業していますので、 時期的にはほぼ網羅しているはずですが、それでもこの本に載っていないマークが次から次へと現れ、 正体解明に悩まされます。(笑)
何でもあり得る文字板のマーク
「ご希望に従ひ御随意の専用マークを入れ御販売願いたく存じます」とあり、 卸商自身が小売店のために希望の専用マークを入れた専用ブランドを請け負っていた事が分かります。 こうなると、時計メーカーのみならずどんなマークもあり得るわけです。
時計製造の形態と文字板のマークの関係
上記を踏まえ、文字板のマークを語る上では、マークそのもの分類を考えて振り分ける必要がありそうですので、一応下のように分類してみました。
分類コード | ブランド種別 | 説明 |
---|---|---|
NB-1 | 一貫製造メーカー | 文字板のマークは、機械を自主生産した一貫製造メーカーの登録商標がつく。 |
NB-2 | 組み立て会社 |
文字板のマークは、舶来機械を国産ケースに入れた組み立て時計メーカーの登録商標がつく。 ユンハンスの国産箱は例外。 【例】渋谷時計製造所(大阪) |
分類コード | ブランド種別 | 説明 |
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PB-1 | 卸商 | 文字板のマークは、卸商の登録商標がつく。製品群につけられる専用マークと卸商の時計に共通して使われる卸商ブランドマークがある。 |
PB-2 | 時計店 | 文字板のマークは、時計店の登録商標がつく。 |
PB-3 | 個人商店 | 文字板のマークは、個人商店随意のマークがつく。このマークは通常商標登録されていない。前述の高橋商店時報の広告の類。 |
こんな格好に整理をしてみましたが、 卸商も一次問屋、二次問屋などと独特な流通経路が日本にはあったようで、流通業界自体がが分かりにくいところがあり、 そのあたりを踏まえた整理は、これからの課題と考えています。