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掛置時計の基礎知識

8. 悩ましい文字板のマーク

時計のメーカーや製造された年代を調べるうえで、文字板のマークは大変重要な手掛かりとなります。 文字板の12時下にあるマークは通常、登録商標のマークであることが多く、 1999年に発行された「日本之時計商標 明治編」が大変参考になります。

日本之時計商標 明治編

1999年1月1日発行
(SAC) 日本アンティーククロック保存研究会

明治編とはいえ、日本の時計会社の多くは明治時代に創業していますので、 時期的にはほぼ網羅しているはずですが、それでもこの本に載っていないマークが次から次へと現れ、 正体解明に悩まされます。(笑)

何でもあり得る文字板のマーク

ご希望に従ひ御随意の専用マークを入れ・・・

高橋商店時報(名古屋)
昭和4年9月号

「ご希望に従ひ御随意の専用マークを入れ御販売願いたく存じます」とあり、 卸商自身が小売店のために希望の専用マークを入れた専用ブランドを請け負っていた事が分かります。 こうなると、時計メーカーのみならずどんなマークもあり得るわけです。

時計製造の形態と文字板のマークの関係

上記を踏まえ、文字板のマークを語る上では、マークそのもの分類を考えて振り分ける必要がありそうですので、一応下のように分類してみました。

ナショナルブランドの時計

(時計メーカーが企画し製造した時計)

分類コード ブランド種別 説明
NB-1 一貫製造メーカー 文字板のマークは、機械を自主生産した一貫製造メーカーの登録商標がつく。
NB-2 組み立て会社 文字板のマークは、舶来機械を国産ケースに入れた組み立て時計メーカーの登録商標がつく。
ユンハンスの国産箱は例外。
【例】渋谷時計製造所(大阪)

プライベートブランドの時計

(小売店・卸売業者などの流通業者が独自に企画・委託生産した時計)

プライベートブランドの場合は、時計は製造業者へ委託して生産される。 そのため、文字板のマークと振子室のラベルは小売店・卸売業者の名前やマークが記され、 機械の刻印はメーカーの商標が記さていることが多い。

分類コード ブランド種別 説明
PB-1 卸商 文字板のマークは、卸商の登録商標がつく。製品群につけられる専用マークと卸商の時計に共通して使われる卸商ブランドマークがある。
PB-2 時計店 文字板のマークは、時計店の登録商標がつく。
PB-3 個人商店 文字板のマークは、個人商店随意のマークがつく。このマークは通常商標登録されていない。前述の高橋商店時報の広告の類。

こんな格好に整理をしてみましたが、 卸商も一次問屋、二次問屋などと独特な流通経路が日本にはあったようで、流通業界自体がが分かりにくいところがあり、 そのあたりを踏まえた整理は、これからの課題と考えています。

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