2. マグナー電磁時計
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メーカー | 製造年代 | 大きさ | 仕様・備考 |
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マグナー電磁時計株式会社(名古屋) | 昭和31年頃 | 全高37cm、幅24p、アルミ8吋ペイント文字板 | 接点式、単一電池一つで稼働、打方なし、色別マホガニー |
マグナー電磁時計の初期の製品です。 電池時計が時計界の革命と呼ばれた時期に電磁時計技術の基盤固めをした製品と言えます。
マグナーからナショナルへ
最初に、マグナーの変遷を確認できた部分だけ記載しておきます。 雑誌や広告からの情報なので正確でない部分があるかもしれません。
- マグナー電磁時計株式会社と協力会社のマジック時計株式会社設立(昭和30年頃)
- 電磁接点式の製品を発売(昭和31または32年頃)型式12nn
発売元はマグナー電磁時計株式会社 - 電磁接点式に整時装置を追加した製品を発売(昭和33年7月)一般家庭用型式1222、事業所用型式3204
発売元はナショナル電気時計株式会社(名古屋市上前津) - トランジスター式の製品を発売(昭和33年10月)型式2001
発売元はナショナル電気時計株式会社(名古屋市中区春日町45番地) - その後、ブランド・商標ををマグナーからナショナルへ変更し松下電器の製品になった
- 協力会社のマジック時計株式会社解散(昭和36年)
トランジスター式の製品を発売する時に名古屋商工会議所にて 5000本のナショナル電気製品(テレビ、掃除機、高級電蓄、ラジオ、コタツ、蛍光灯、その他記念品)が当たる新製品発売記念大売り出しのイベントを三か月間開催しています。
型式12nnの分類
カタログがないので推測ですが、 120nは単色、 122nはツートンカラー、 の製品で、型式の明確な識別なく、接点式に整時機能が追加されたと考えられます。 以下、そういう前提でこの型式1206の初期のマグナーを考察します。
型式1206の考察
外観は前頁のHORIZON(製造元不明)と同様に、意匠は当時流行していたシンプルな文化型の柱時計の趣です、サイズは小型化しています。 枠の材質について、背板は集成材ですがそれ以外は木製で色別もマホガニーで落ち着いた仕上がりです。 電池ホルダーを文字板裏の配置したことから、背板一枚ですっきりしたレイアウトとなっています。 背板や文字板をとりつける木板の裏側に0(ゼロ)のスタンプが押してありますが、どういう意味かはわかりません。
ムーブメントは試作品レベルだったHORIZONと比較すると大幅な改善がみられます。 設計に無駄がなく、メンテナンスしやすいです。 例えば、当時は電気で動くというのは奇妙キテレツな存在で時計屋としてはできれば電気関係のところは触りたくなかったはずですが、 HORIZONは、専用工具を使ったりしてよほど工夫しない限りムーブメントの脱着の際に電磁振子を同時に取り外す必要がありました。 場合によっては背板を一枚剥がす必要さえある設計です。 振子を外す際には諸々の配線をさわってしまうリスクがありますので、時計ムーブだけ脱着したいところですが、 マグナーは振子の支点のネジを外すだけで時計機械のみをさくっと取り出すことができ、ムーブそのものには一切の配線がありません。(写真7)
改善点のもう一つ、これが最大の特徴なのかもしれませんが、 刻音がとても静かなことです。 HORIZONは、歯車を爪で送る際の刻音がガッコンガッコンという感じで、それはそれで微笑ましかったのですが、 マグナーは同じ電磁振子時計なのに現代のクオーツ時計に匹敵するほど静かです。 理由は熟考された爪送り機構にあります。(写真10) まるで人間の指先で歯車を進めているかのような動きをする機構で、分解して単体部品の動きをみたときはこの部品を考案した人は賢い!と感心しました。 これが機械式時計でしたら、ナントカエスケープメントという名前が歴史に残っていたかもしれません。 文字板の6時下に3つのパテントの記載があります。調べてませんが(汗)、爪送り関係かなと思っています。 PAT. NO.204316,398508,400101
電磁時計の普及のためにメンテナンスがしやすくて静かな製品を作る、そういう思想があったように思います。
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時間調整について
調整錘の一回転は一日に一分です。 右廻しで進む(Fast)、左廻しで遅らせる(Slow)
最後に接点式の欠点を整理します
HORIZONよりはだいぶいい!と評価できる初期のマグナーですが、やはり接点式は最大の欠点となっていますので、 あらためてその理由を述べておきます。
接点式電磁振子時計は振子の一周期ごとに電気接点を入切して(写真9)、棒磁石を取り囲むコイルが右から左へ振る時だけコイルに電流が流れてコイルが磁石を吸引して振子の振動を持続させています。 この方式の欠点は、例えば振子の周期が1秒であれば1日に86,400回、一年にするとおよそ3,150万回も接点が入切することになるので接点不良の発生は不可避です。 また、電気接点はある程度以上の接点圧力を必要としますので振子に加わる力も大きく、振子の等時性の観点からもイヤらしい存在だと思われます。
当時の広告
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型番122nのツートンカラーの製品は、 ツートンはカシュー塗仕上げで、 レバーを引くだけでラジオの時報に合わせて正時刻にあわせられると謳った整時機能(レギュレータ付きと呼ぶ)の追加された製品かもしれません。(1958年7月の新製品)