家具職人としてスタートしたエリアス・イングラハム(Elias Ingraham1805〜1885)は、時計のケースメーカーとしても成功して 1860年にE.INGRAHAM &COを設立して本格的な掛時計製造に乗り出し、バラエティーに富んだケースを供給して人気を博した。
1. IONIC, Rose.(木地四ッ丸)
メーカー | 製造年代 | 大きさ | 仕様・備考 |
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イングラハム (米国コネチカット州) |
明治初期 | ペイント文字板十吋、全高55cm |
八日捲き、打方付 文字板は紙の補修用文字板が上張りされている |
商品名になっているアイオニック(IONIC)とはギリシャのイオニア式のという意味で、 ギリシャ建築様式の柱面に縦溝が走り、柱頭の両側に渦巻き型の飾りがつくこの部分をデザイン化したものです。 (パテントについては後述)
アイオニック初期にはROSE(木地),MOSIC(寄木),GILT(金箔押し)の三種があり、 この時計は木地のROSE。
箱の中に、「近江神崎 川並学用品」と墨書があり、機械にも「近江川並村 学校用」とあり、 明治時代に近江国・滋賀県にあった神崎郡(かんざきぐん)川並村の学校の備品だったようです。 日本にはこの時期、ボンボンの初期の輸入品として金箔押しのアイオニックが金四ッ丸の商品名で普及しましたが、 学校用には落ち着いた木地が似合っていたのでしょう。
背板の焼印
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背板に「神崎五区 川並村 戸長検」との焼印が19個ある。良く見ると異なる部材の「割り印」であることが分かる。
機械と箱の中の墨書
箱の中に、「近江神崎 川並学用品」と墨書があり |
E ENGRAHAM CO BRISTOL CONN の刻印 |
振り子室のガラス絵とラベル
機械と振子
IONICのカタログ
GILT(金箔押し)は1ドル高かったことがわかります。
四ッ丸スタイルの最初のパテント
これは有名な四ッ丸スタイルの最初のパテント(No.970)で、 1857年12月12月22日にデザイン登録されたダブルサーキュラードア スタイルです。 その代表がローズウッドを着せたシェルフクロックと呼ばれる置きタイプのクロックのDoricやVenetian, そして掛時計タイプのIONICに採用された八の字ドア(figure'8'door)です。 このスタイルは50〜60代の主流となり、各種のデザインとサイズ、機能を持ち、長年ベストセラーとなりました。