1. 大沢商会 概略
大沢商会時計工場は、明治23年に大沢善助氏が個人事業として開設した時計製造会社であり、
一貫製造メーカーではなく舶来機械を入れた自家製時計を製造した組立て会社として知られる。
「創業100年史・大沢商会」によると、
創業初期(明治26年から28年にかけて)は僅かな期間ではあるが、一貫製造メーカーとして活動したとされる。
しかし、大沢商会の国産の機械は未確認で、工場の規模や動力、統計に出てこないところなど、
すべて自家製の時計や製造会社が本当に販売されたのか疑問が残り、解明が待たれる。
2. 十吋花
資料 1
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セス・トーマスのオフィスN0.3をコピーした10吋「花」。
10吋文字板は張り替えられている。ベゼルのガラス押さえは舶来式の金属枠で押さえる作り。
機械もトーマス式の3番車が大きいタイプで大阪時計の同様なものに似ている国産機械だが、どこのものかは不明、刻印ナシ。
ラベルは少し楕円の丸の中に黒紙に金彩でCLOCKS MANUFACTURED BY OSAWA COMPANY
このラベルは少ない。
ラベルの書き方やトーマスを丁寧にコピーしてる事など国産機械を入れて組立てた比較的古いタイプの製品では無いかと思われる。
ボン針台マークなし、巻きカギはオリジナルかは不明。
振子室ラベル、他
![]() CLOCKS MANUFACTURED BY OSAWA COMPANY |
![]() ガラス押さえは舶来式の押さえ方 |
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資料 2
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猫と子犬のガラス絵が可愛らしいです。 このガラス絵自体がオリジナルであるか否かはわかりませんが、 古い時代の絵であることは確かなようです。 子犬が入った帽子の上には蜂もいるようです。
基本的には資料1と同じですが細かい点でいくつか違いがみられます。
- ガラス押さえが一般的な方法になっている
- 機械には巻き止めがついていた形跡がある
- 文字板は古い時代の張り替え
文字板の裏には、明治20年代の後半から大正末にかけての修理履歴が10個以上ありました。 40年近く現役で動いていたようですが、その間に脱進機周りの修理が何度も行われた形跡があり、遂には時計屋に匙を投げられたようです。
完璧な修理は必要に応じて未来のどなたかに任せるとして、 今回は部品は現状維持で時方・打方共に問題なく稼働する程度に修理しておきました。