1. 表紙と電気時計の種類
表紙
時計工場が製作した精工舎時起動B式電気時計
近年電気事業の進展に伴い同期電動機を用いた交流電気時計が盛んに使用せらるるに至りましたが、 就中精工舎時起動電気時計は精工舎四十余年間の時計製作の薀蓄を傾け電動機は勿論歯車其の他一切の機構を自工場で製作して 幾多の特許を獲得し一般から好評を博して居る所謂「停電にも止まらぬ電気時計」はじめ各種の型式の完成をみたのであります。
この精工舎時起動電気時計は小型の同期電動機の回転数を歯車の組み合わせにより減速して時計の働きをさせたものでありまして この同期電動機は発電所の出す周波数(サイクル)に正比例して回転するもので電圧や温度により変化しないのが特徴であります。 従って標準時計を設備し周波数を一定に保つよう正確に調整して居る会社の電燈線へ接続すれば些かの狂いもなく正確に運針致しまして 消費電力は僅か2ワットに過ぎません。 尚電動機及び歯車装置は精工舎特選の良質油を充たしたケースの中に密封されて居るので 埃も入らず油のきれる事もなく長年の使用に耐える理想的電気時計であります。
電気時計の種類
A式
電流を通すれば運針を始め電流が切れると停止する、 構造も極く簡単な一般的の電気時計。
一般家庭、銀行、会社、商店、工場等にて少数御使用の所に適しています。 これは一般に同期電気時計と云われて居るもので電燈線に接続して時間を合わせて戴けば其の儘運針を続け正確に指時致します。 停電の際は時計も止まりますが、其の時文字盤面に赤色の指標が出まして指時の狂っていることを示します。 此の場合に指針調整用ツマミを廻して指針を合わせさえすれば指標は自然に白に戻ります。 尚完全なる自起動装置ですから送電と同時に針が動き始めます。
B式
停電にも止まらぬ指示正確な理想的電気時計。
電動機はA式と同じですが之に加ふるにゼンマイの力による補助装置があります。 この装置は時計工場精工舎の最も得意とするところで長年の経験から製作された独特のものでありまして停電に際して自動的に切り換えとなり 時計は五時間くらいは止まりません。 このゼンマイは電気の力で自動的に一定の強さまで巻かれます。 斯様にこの式は停電に際しては普通の時計と変わらずゼンマイで動き再び送電されれば電気時計として働くものでありますから A式の如く文字盤面の指標はありません。
C式
多数の電気時計の指針を一ケ所で短時間に合わすことの出来る型式。
ビルディング其の他多数の時計を使用する所に最適の品であります。 之は一個の時計機械に二個の電動機が装置され其の内の一個は指針を動かし他の一個は停電の為に遅れた指針を調整するに使用されます。 即ちスイッチを一ケ所で操作し各時計の調整用電動機を一斉に動かし標準時に合うまで指針を高速度(普通の十倍)に進めますから 短時間に全部の時計を同時に調整出来ます。 従ってこの式の電気配線は三本となります。尚前記の操作は手動調整の場合ですが自動的調整操作をする標準時計の取り付けも出来ます。
D式
同期電動機式と電池式の併用による電気時計。
長期の停電にも止まらぬ装置で停車場、郵便局等に最適品であります。 この型式は絶対に指示の停止を不可とし常に正確な時間を示すことを必要とする停車場、郵便局等の場合に採用されるものでありまして 常時は同期電動機により指針を動かしますが停電時には蓄電池式電気時計により親時計があって蓄電池から十秒毎に瞬間電流を送って指針を動かし 再び送電されるに至って自動的に同期電気時計の作用に復帰する型式であります。 この間の操作は全部自動的に行われますから少しも停電の為の心配は要らず長期の停電にも故障の起らぬ理想的な電気時計であります。
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