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コロニアルA号時計
正確なる時を保つ範囲に於いて最小限度の薄型時計を得んとして成功したる時計であります。 高尚優雅と正確とを併せ得たるは本品の矜とする所であります。 日本紳士向最高級品として特にお薦め致します。
- 〔器械〕リバーサイド・マキシマス(廿一石入)
リバーサイド(十九石入) - 〔大サ〕十四サイズ及十サイズ
- 〔品等〕温度調整済
位置試験済 - 〔文字板〕金属製金色又は同銀地浮出金文字
- 〔側〕十八K黄金、十四K青金又はホワイト・ゴールド
(文字板及び時計側に就いては29頁を御参照下さい)
〔10頁〕
又時計は一種の投資物であります。我々はそれを信じて買うのではありますが、要するに一種の賭け事の様なものであります。 どんな子供でも時計を欲しがらぬものはなく又それが愈々自分のものとなった時の喜びと云ったら、幾度耳に当ててそのチクタクを聞くことでしょう。 又時計の顔を見たいばかりに、一日の中に幾度時間を見ることでしょう・・・・・。 而して時計を持たない不幸な皃等を怎麼に同情したことでしょうか。
然るに大人になるに従って、一層良い高価な時計を買ったり贈られたりするようになります。 年を経るに伴れ時計の真の有り難さが判って来ると共に漸く時計の利用法を知って来ます。 真実時計ばかりは誰でも持つべきもので、これを持たない者こそ真に不幸な人であります。
若し諸君が時計器械に就いて充分な理解を持って居て、時計屋へ買いに行く時に、 何んな時計を自分は入用なのか又何故に時計が欲しいのであるかと云うことをはっきり自覚して居るとして御覧なさい。 それがその投ずべき金の何の位貴い保証となることでしょう。 又自分の大好きな且つ世界に於いて求め得らるる限りの精巧な良質の時計を自分は持って居るのであると居ふ欣びの何処に有力な裏書となるでありましょうか。 【→ 13頁に続く】
〔11頁〕
コロニアルB号時計
本社最新の設計に係るもので好評嘖々たるコロニアルA号に準じ従来の十二サイズに一段の改良を加えた極めて薄型の瀟洒な懐中時計であります。 コロニアルA号と共に日本紳士向として好適の品で御座います。
- 〔器械〕リバーサイド(十九石入)
(温度調整済並に位置試験済)
ローヤル(十七石入)
(温度調整済並に位置試験済)
一二三五番(十七石入)
(温度調整済) - 〔大サ〕十二サイズ
- 〔文字板〕金属製金色、同銀地浮出金文字又は瀬戸支
- 〔側〕十八金並に金張側(青金又は黄金)
(文字板及び時計側に就いては29頁を御参照下さい)
〔12頁〕
諸君は此種の知識を有しては不可いと云う筈はありません。 換言すれば諸君は何故衣装や住宅や自動車を買うと同様の確信を持って御求めにならないのでしょう。
人は何物でも一々比較して見て買物を致します。 然るに時計だけは概ね例外であります。 比較に依って物の価値を知り、経験によって其の品質を知ります。
先づ第一に記憶して頂きたいのは時を報ずるのは時計の側ではないと云うことです。 多くの欧州の粗製品は気の利いた側に入れられて居るが為に、動もすればそれらが最上の時計であるかのように信じられ、 又一般にそう思われて売れて行くのであります。 然し尠くとも諸君は時計を買われる時には常にケースは単に内部の器械に適当な保護を与えれば足ると謂うことを念頭に置かねばなりませぬ。
抑々何故に斯く多数の人達が欧州製の時計を最上のものと考えるかと云うことを穿索して見るのも、強ち無盆な業でもありますまい。 御承知の通り、ある一つの考えが世間一般に信ぜられた時には、それを取り除くのは非常に困難なものであります。 然し翻って一体何が故に又何なる知識又は証〇 【→ 15頁に続く】
〔13頁〕
十二サイズ時計
正確堅牢を以て第一要件として製作された時計で日本市場に於いても既に数十年来最高の好評を博し來れる逸品であります。 体裁優美にして且つ耐久性に富みしかも価格の低廉なるは到底他の追随を容さぬ所であります。 最近従来の十四サイズに代わり陸軍鉄道総隊の御用を拝命致して居ります。
- 〔器械〕二二五番(十七石入)
二二〇番(十五石入)
二一〇番(七石入) - 〔大サ〕十二サイズ
- 〔文字板〕金色又は銀色金属支並に瀬戸支
- 〔側〕十八K又は十四K黄金、金張、銀及びニッケル側等
(文字板及び時計側に就いては29頁を御参照下さい)
〔14頁〕
に基いて此の世間一般の考えを吾々は信ずるのであるかを自問する時、 忽然として吾々はそれが尤も確実な根拠無き一つの噂に過ぎないことを悟るでありましょう。
実際吾等は欧州製に係る粗悪な時計を買ったり使ったりして苦々しい経験を嘗めたことがあり、 又少くとも他人が嘗めたのを知って居ります。
一世紀前には世界中の時計は総て欧州の主に瑞西製でありました。 当時時計は非常に高価で、余程の金満家でなければ持てませんでした。 それは主に小規模に手技で製造されたからであります。 尤も之れは現今としても同様でありますが、只其の異なる点は今日では時計製造は同地の幾十万の人々の主なる職業となって居て、 その人達は夏は多くは耕作に従事し、長い冬の間を時計の部分部分を辛苦して手細工で拵え上げ、之れを時計組立工場に売ると、 工場ではそれらを組み立てて諸外国の人に売るために輸出するのであります。 従って斯様な寄せ集め時計と、一つの大工場で各部一定の標準によって造られ且つ一定不変の材料と設計とに依って出来上がった時計とは 到底比べ物にならない位の事は直ぐに解る筈であります。
欧州の時計製造法は以上述べたように、主として手工に依ります。そし 【→ 17頁に続く】
〔15頁〕
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