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敏工舎 BINKOSHA

3. クロノメーター輪振

クロノメーター装置輪振巻留付

メーカー 製造年代 大きさ 仕様・備考
敏工舎(名古屋市中区) 昭和初期 10吋文字板 八日捲き、デテント脱進機、打方付

資料提供 : わったんさん

日本製クロックの歴史において珍品といえる時計です。 背板のラベルに「クロノメーター装置輪振巻留付」とその内容について説明がありますが、 この時計の機械を簡単に整理すると、それまでの普通の名古屋機械を輪振りにしただけでは飽き足らず、 脱進機と調速機(テンプ)が力の受け渡しをする瞬間のみ両者を接触させ、それ以外の時間はテンプを自由振動させる仕組みである 自由脱進機(デテント脱進機:1748年にフランス人ピエール・ル・ロワが考案)を組み込んでしまった製品です。

背板ラベル

クロノメーター装置輪振巻留付

この珍品誕生の背景を勝手に考えてみたいと思います。 大正にもなると名古屋の掛時計製作技能と東京の精工舎のそれとでは明白な違いがでてきます。 名古屋では部品一環生産による品質の維持や大量生産のシステム化が遅れており、 多くの工場で機械加工の不備から時計機械部分の製作における最後の仕組み行程で 職工個人の熟練技術に依存した部品の適当な組み合わせ、修正を行い仕上げていました。 一方、精工舎などは、昭和に入れば15日巻座敷時計がかなり普及し、輪振は高級輪振機械の大量生産・販売をして、さらには電気時計にもチャレンジしている状況です。 そうなると当然名古屋式で作られた製品の競争力はなくなりますので、名古屋の時計メーカーの多くは掛時計以外の分野にその進路を求めていくようになっていきましたが、 敏工舎においては、創業も遅かったことから最後の足掻きでそれまでの掛時計をベースにして特徴的な製品を世に出すことで活路を見出したかったのかもしれません。 資料提供者からは以下のコメントをもらっていますので、あるいは優秀な仕組師が数名いたのかもしれません。

動画で動きをみる

スロー撮影

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