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敏工舎 BINKOSHA

1. 月猫宮型スリゲール

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六吋宮型スリゲール
Model S hour striking

機械は〇に右からBIS商標、文字板は三日月猫

メーカー 製造年代 大きさ 仕様・備考
敏工舎(名古屋市中区) 昭和初期 全高47cm、幅20p、5吋ペイント文字板 八日捲き、打方付(Model S)

名古屋の敏工舎(びんこうしゃ)の宮型スリゲールです。 敏工舎は小菅時計店が取り扱っていた時計の一部を製造していた会社で、当初は時計蓄音機の製造販売からスタートして、 昭和6年以降は時計製造会社を独立させたものの、昭和8年には時計製造はやめて蓄音機事業のみに移行したようです。 (今でも時計店でメガネを取り扱うところが多いように、このころは時計と蓄音機レコードの兼業店が多い時代でした)

製品としては、この宮型スリゲールのほかに、グレシャム、八角尾長など当時の一般的な形状の掛時計と、 特殊な輪振り、また一部置き時計の存在を匂わせる部品を確認しています。

BINKOSHAの浮き文字

製品の様子ですが、「組立時計」の印象です。 宮型の箱は材料、造りともに普及品の品質。 文字板はいかにも当時の名古屋ものっぽいですね。 機械は名古屋各社で共通した設計のModel Sと呼ばれるタイプで商標刻印があります。なお打方に半打ちはありません。 ボン針台にはBINKOSHAの浮き文字があります。 全体として関連ページに掲載してある矢島リバー号とよく似ています。 敏工舎は、メーカーとしての活動期間が短期間だったこともあり、また名古屋という土地柄から、 部品は界隈から調達して組み立てのみを行っていたのかも知れません。

6吋ペイント文字板

三日月に猫

この時計の一番の見どころは、文字板の商標です。 敏工舎の商標の 「TRADE 〇に右からBIS MARK」 ではなく、なぜか 「TRADE 三日月猫 MARK」 です。 ねずみな感じもしますが、猫です。 この商標で振り子室ガラスに「TSUKINEKO」と金文字の入ったものがありますので、 月猫ブランド系列の製品があったようです。 文字板は6吋とやや小さめで中央が凹んだ形になっているため、文字板と針の間が一般の時計より大きめです。 そのため、時刻合わせの際に指が文字板に接触することなく、文字板が良い状態で残っていました。

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