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精工舎 飛行時計・航空時計

1. 陸軍 飛行時計:Army Air Corps. Aircraft Clocks

メーカー 製造開始年 大きさ 主な仕様
第二精工舎 1933(昭和8)年? 17型 アンクル式、7石
一日捲
スモールセコンド
アルミ製艶消し黒塗装ケース

「飛行時計」です。もちろん時計そのものが空を飛ぶ訳がなく(笑)、航空機、それもこの時代ですから軍用機、戦闘機等で空を飛ぶ時に使われた時計です。 利用形態により航空機の計器盤に組み込まれたタイプ、腕時計タイプ、懐中時計タイプの三種類がありました。 いずれも鉄道時計19セイコーがベースとなっています。
ここに掲載の時計は、航空計器タイプですが、いずれのタイプの飛行時計も 一般の時計と違って服部時計店などで一般販売はされず直接、軍に納入されました。
従ってカタログ等の資料が存在せず、その詳細は現物から推測するしかありませんので 以下は、既知の情報や現物から確認した内容、また頂戴した意見からの推測です。

まず、航空計器タイプはすべての時計に精工舎が取り付けた「型式プレート」がついています。 型式は、93式と100式の二種類があり、それぞれに機械の石数、ケースの材質などの仕様差があります。 93式とも100式とも書かれていないプレートがありますが、これは93式の後期のタイプであるという見方が有力です。 (93式後期タイプは当時100式と共存しており、100式採用開始以降は100式銘ありと銘なしで区別していた)

ここに掲載の時計は、 プレートに「一〇〇式・・・」とあるものの、 文字板は12時の下に小秒針、6時の上に「一日捲、飛行時計」の刻印があり機械は7石、ケースは100式で中身は93式とも見れるものです。 (もともとこういうものなのか、後年の何らかの理由で組み換えたのか不明。)

型式毎の仕様

  93式 100式
機械 スモールセコンド
【前期】15石
【後期】7石
出車式中三針 9石、7石
秒針 12時下に小秒針 文字板中央(中三針)
文字板表記 【前期】

一日捲飛行時計
(九三式)
【後期】

一日捲飛行時計

一日捲飛行時計
竜頭 6時位置 6時位置
ケース 真鍮製/アルミ製 真鍮製/アルミ製
型式プレート 下を参照

九三式飛行時計

九三式 昭和13年11月製造

ケース、型式プレート共に真鍮製

写真提供 : saruさん

九三式 昭和14年6月製造

型式プレートは真鍮・隅切りで(九三式)とある

写真提供 : 栃木のSさん

九三式 昭和17年製造 (100式製造開始以降)

型式プレートはアルミ製

写真提供 : 栃木のSさん

一〇〇式飛行時計

一〇〇式 皇紀2600年陸軍制式採用

型式プレートはアルミ製

視認性を良くするために出車式中三針のセンターセコンドに改良された。

写真提供 : 栃木のSさん

航空計器タイプ飛行時計の使われ方

機内では基本的にはフランジの4箇所の穴にネジ止めして計器盤に固定します。 機外では写真のようにパラシュートの紐を通して首にぶらさげた当時の写真がたくさん残っています。
計器盤に組み込むと調子が悪いのと、一斉に時間合わせをしたりする都合からか、 戦争が激しくなるともっぱら首から下げたようです。 首から下げる場合、6時を下にするか12時を下にするかはマチマチだったようで一枚の写真の中でも両方のやり方を している人が写っている写真もあります。

93式、100式とは

型式 皇紀 西暦 和暦
93式 2593年 1933年 昭和8年
100式 2600年 1940年 昭和15年

陸軍では正式採用した飛行機の機体の名称に 昭和元年以降、日本の紀元年号(神武天皇の即位したといわれる年を元年とする紀元)の末尾1〜3桁をとって 2597年(昭和12年)に正式採用したものは九七式、2600年は百式、2604年は四式というように年号名称を冠して 読びました。
海軍では、昭和5年以降陸軍と同様に日本の紀元年号の末尾1〜2桁をとって九七式、2600年は零式、 2602年(昭和17年)の二式まで続けましたが、昭和18年7月以降は「連山」等というような表示になっています。
機体だけでなく、発動機についても海軍は昭和五年以降、九〇式、九一式になどと読んでいましたが途中から中島製は縁起の良い 漢字一文字(「誉」など)、三菱製は星の名(「金星」など)、日立製は風で(「神風」など)、愛知製は所在地名の「熱田」と 名づけています。
日本語名での呼び方には年式を秘匿する意味もあったようで、○○式の機体も写真公表をする場合は「隼」等日本語名をつけて 発表していました。

飛行時計の型式もこのような機体や発動機の呼び名と同じで、例えば、93式飛行時計は皇紀2593年(西暦1933年、昭和8年) に正式採用された機体以降の計器盤に装備或いは支給されたものと考えられます。 ただし、機体の型式と飛行時計の型式は必ずしも一致するものではなく、例えば100式重爆撃機は100式飛行時計ではなく、 まだ93式飛行時計を採用していたようです。
軍用機の生産台数は当然ながら昭和16〜20年の間が圧倒的に多く、各社合計して七万機を生産したと言われておりますので、 現存する飛行時計はやはり100式が多いようです。

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