1. 往診用小型感傳機 【無名】
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江戸時代に製作されたピリッと電気ショックを起こす機械全般をエレキテルと呼んでいます。 幕末から明治時代にかけて国内で製作されたエレキテルは電気治療器と電信機に関するものです。 写真は、明治に入ってから流行した電池式の電気治療器です。乾電池は屋井先蔵の世界初の乾電池を使用しています。 この治療器には名板がなく、また研究資料も乏しいことから不明な点が多いですが、確認できた範囲で整理しておきます。
動作原理(推測)
あまりにもコンディションが良いので分解するには気が引けて中身の確認はしておりません。中身については推測です。
電源は屋井乾電池です。 電池の出力は、写真に見える青いコイルに接続され、このコイルは断続切片の動作をしリレー的な役割をしているようです。
- 電流が流れると青いコイルの鉄芯が電磁石になる
- 電磁石が、鉄でできたT型のスイッチ金具を引き寄せる
- スイッチが切れて電流がオフになり、電磁石が切れる
- T型のスイッチ金具はバネの力でオン側に引き寄せられる
このリレー切片は高速で振動しスイッチのオン・オフを繰り返します。 この動作で木箱内部にあると思われる誘導コイル(インダクションコイル)に感傳電流(擬似的な交流電流)を生み出し、 電圧を上昇させます。インダクションコイルには幾本かの引き出し線があり、写真の円盤(変圧器)に取り付けられたレバーをまわすことで、 出力を調整できます。 インダクションコイルの出力は機械盤面の端子に引き出され、そこから各種導子を接続し患部にあてる。おそらくこんな感じです。
感傳電流の特徴
ドクトル永澤によると、以下の特徴があると述べています。
- 局所刺激作用迅速連発の針で刺すが如き疼痛あり
- 筋肉の攣縮(れんしゅく)興奮作用 --- 平流に比較して大なり
- 運動神経、筋肉の麻痺神経変性瘢痕等感覚鈍き諸症に適す、電気診断上必要なものである
小引き出しには電流を患部に当てるための各種導子がはいっています。 茶色の2本のコードが導子用コード。中央付近のコロコロローラーのようなものは廻転導子といって按摩マッサージ術美顔術等に用います。 その他、よくわからないものも多いですが、低周波用なので身近な治療用途という感じですね。 これが、高周波用になるとかなりグロテスクな導子がありまして・・・そうじゃなくてよかったです。(笑)
こんな機械で梅ちゃん先生に治療されたらシビレますね〜
電気治術史の概要
1789年にルイジ・ガルバニー(伊)が初めて平流電源を発見したが、まだ医療に応用せらるるに至らず、 その後ローベルト・レマーク(独)が平流電源を治療上に応用したのは1861年頃のことである。 これが平流電気療法の嚆矢である。
是れより先、摩擦電気が治療上に応用されたが、その効果は著名ならず、方法も複雑なので広く実用化するに至らず、 然るに1831年にファラデーが感傳電流を発見して以来、デュセンヌ(仏)が之を祖述して湿潤導子を使用し、 皮下に電流を限局し得ること及び筋肉攣縮を誘起し得るべきことを発見して、以来診断上及び治療上に専ら感傳電流を応用するようになった。
又ルヂュックが断続性の平流電流を考案して治療上に応用し、ワットビールは平流感傳の両種電流を同時に作用せしむる所謂混合電気を発見した。
次に、テスラは高周波電流即ち「テスラリサチオン」を発見し、アンソンワールは、「アンソンワリザチオン」を考案した。 又、1896年にマルコニーは無線電信を発見したと同時に高周波電流療法は種々研究改良せられ、 ツアイネックは全く無刺激性副現象少なき所謂透熱「デアテルミー」を発見した。
尚、1895年にはレントゲンが「エッキス」光線を発見したので、各種疾病の診断上並びに治療上にあまねく電気療法が応用せられ、 輓近薬物療法の効果なき疾病一般皮膚病、神経系、筋肉系の疾患は勿論内外科其他各科の疾病に対して、各医科大学専門学校に於いても競ふて物療科を新設し、 民間に於いても各専門的研究者が続出して今日の発達を遂げたのである。
参考文献 : 電療臨床医典 ドクトル永澤盛著、昭和6年
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