4. 仏国製珍置時計(水彩画)
これは石黒敬七のコレクションということではなく、明治天皇が所蔵のフランス製置時計を伊藤博文に下賜され、 その後何らかの縁で高橋某家に伝来したという珍しいいわくつきの時計です。
明治天皇の時計好きは有名で、西郷隆盛遺愛の懐中時計は明治天皇から拝領したものだそうで、 天皇は内外からの献上品として受納するとともに、自国の功臣に時計などを下賜されるのは少なくなかったということです。 先の「 東都時計蒐集・趣味家見立鏡 」(昭和39年日本時計倶楽部編集)の番付表に総元締として天智天皇と並んで明治天皇の名前が有り、 色紙の賛はその辺の経緯を含んだものといえます。 石黒敬七が昭和31年に縁が有って旧家高橋家でこの時計を拝見して、興味を持って絵を描いて記念に残したということでしょう。 時計コレクターにして画業にも秀でた才能を発揮した石黒ダンナの記念碑的傑作です。
石黒敬七
- 明治30年8月10日 新潟県柏崎に生まれる。
- 大正8年、早稲田大学政経学部卒業。
- 大正13年、柔道師範として渡欧して柔道の普及に活躍。
- 大正14年、画家藤田嗣治の推薦により、フランス画壇の登竜門として名高いサロン・ドートンヌ展に連続二回入選。
- 昭和8年、帰国。講道館の審査員となる。
- 昭和24年から、ラジオ全盛の時代のバラエティー番組の元祖ともいえる国民的人気番組「とんち教室(NHK)」 にレギュラー迷回答者として人気を博す。
- 昭和49年没後は御子息がコレクションを継承し、「石黒敬七コレクション保存会」を作り、一時、 出身地の新潟県柏崎市に「とんちン館」としてコレクションが展示。 現在は石黒コレクションとして父子の古写真コレクションとしても有名。
参考文献:「時計亦楽」平野光雄著 昭和51年10月25日、青蛙房刊
「続時計と民具と」平野光雄著、昭和49年7月27日日本時計宝石PRセンター刊
「がらくた美術」昭和50年3月22日、大陸書房刊
氏は趣味も多彩で、パリ蚤の市仕込みの古物コレクションは有名。 「東都時計蒐集・趣味家見立鏡」の東のNo.3 関脇に随筆家として名を連ねているように時計収集家としても知られています。