1. 錆だらけの天真の再生
使えるかも知れない素材のチョイス
深海の沈没船ではありません。 精工舎の鉄製置き時計の時打機械です。 裏蓋など欠品した状態で50年、あるいはそれ以上、どんな場所に放置されていたのか、 とにかくびっくりの錆具合です。ここまでひどい機械はそうそう無いと思いますので、 今回はこの天真が使い物になるか、再生にチャレンジです。
天真を外す
錆び付いた受けネジを緩めて天府を取り出しました。 酷い錆でしたが地板は真鍮なので完全に固着することなく、なんとか受けネジ緩めて天府を取り出すことが出来ました。 写真は埃を洗い流した状態です。天真はまんべんなく錆て、しかも錆が深くまで侵食している感じです。ヒゲゼンマイは鉄製のためボロボロ、 ピンセットで触れるとグズグズと崩れます。天真は充分長さが残っているので、錆を除去できれば良い部品になります。
錆取りと研磨
錆取りは極普通にサンドペーパーでやりました。 最初に400番であらあらの錆を除去し、次に1000番で表面を仕上げます。 ペーパーの番手は適当です。たまたま手元にあった荒目のが400でやや細かいのが1000だっただけです。
錆取り後、天真研磨機で先端を仕上げます。
研磨完了
錆取りと天真先端の研磨が完了した状態です。 鉄ヒゲは他のジャンクパーツからセットしました。 天真の錆が深いところは黒っぽい状態になっていますが、削りすぎないように妥協して、これにて研磨は完了です。 それでも、天真は若干細りましたので、中央のヒゲ玉をキュッと閉めています。 先端は動作に影響しますので完全に研磨します。
ヒゲゼンマイの取り付け角度を調整
ヒゲ交換をするとどうしてもヒゲが片振りしますので、それを修正する時にヒゲ玉廻しをあてて廻します。
動作確認
仕上げた天府を動作確認用の機械にセットして、ヒゲの形などの微調整を行います。 無事に動き始めました。すごい錆びでしたが使えるようになりましたね。めでたしめでたし。
Y・M・K 山口の天芯研磨機の紹介
あるとたいへん便利な天芯研磨機。 昭和30年頃のものと思われます。当時の定価は13,500円でした。 置き時計の天芯を研磨する専用機で、ビー機械からヘソ目くらいの天芯の太さのものを二分程度で研磨できます。
使いかたを簡単に説明します。
- 天府をAのチャックにつけて、閉めナットBを右に固くねじると天府がチャックに固定されます
- 天真が荒砥Dの上に当たるように静かに倒し、天真が砥石の上にちょうど乗るように送軸Gを左右にまわして調節します
- スプリングHは砥石に天真を当てる強さなので、ビー系であれば上のほう、ヘソ目やコロナであれば下の方にセットします
- テーパー軸Fを左右に廻し、天真を磨る角度を決め、ハンドル@をクルクルと一分程廻します
- 天真がだいたい磨けたら反対側の仕上げ砥石Eの上に天真を当てて、再び30秒ほどクルクルとハンドル@を廻します
以上で完了です。 - 油壺Iのなかに油が入っているので常に研石に油がついて汚れた油はスポンジに付着するようになっています
テンプ式の置き時計は本来どんな姿勢でも動かなければいけません。動くけどすぐ止まるとか、寝かせていないと動かないとか、 傾けると止まるなどという症状は、だいたいが天芯の磨耗が原因です。 キズ見でみて天芯の先がまるくなっていたら研磨が必要です。
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